街のスイッチ
帰り道、坂を登るのに顔をあげたら、
丸になりきらない月に
うっすらと雲がかかっていて
そのとなりでひとつ、
名前のわからない星が光っていた。
ただ、綺麗だと思った。
角を曲がってまた、空に目を向けたら
次は一段と明るく光る星がみっつ、見えた。
この季節の夜7時の空は
夜になりたての色をしてる。
それは深い深い藍色、
心が落ち着くとっても好きな色。
まだ遠くの空はうっすらと明るく、
そのグラデーションが川に映る。
私が右手の中指を鳴らしたら
街の明かりが全部消えたりしないかな。
街灯も家も全部、パッと消えて
私と自転車と、山と、川と、
空だけにならないかな。
街のスイッチがあればな、
スイッチを切ってる間はみんな静か。
私以外、他の人はだれもこの1分間を
感じなかったりして。
なんて考えながら自転車を漕ぐ、漕ぐ。
夏が終わる切なさで
憂鬱なことも全部忘れられたらいいのに。